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タイアップの歌謡史 (新書y)

タイアップの歌謡史 (新書y)

買ったまま放置していたものを引っ張りだして読んでみると、思っていた以上に面白かったので1日で読んでしまいました。タイアップ、と聞くとCMやドラマぐらしかパッと浮かばなかったものの、その源泉が「カチューシャの唄」になる、というのは、言われてみるとそうなんだなぁ、と思った次第。

そこから戦中〜戦後とつながっていく中で、「東京音頭」や「南国土佐を後にして」もこの範疇に含まれる話などは面白かったです。「お富さん」がパチンコブームと関連していた話は、この間のBSで放送されていた「昭和歌謡黄金時代〜春日八郎と三橋美智也〜」の中でも取り上げられていたのを思い出しました。

リアルタイムに知っているのは「いい日旅立ち」あたりからなので、そこまでは主に文献やCDなどでしか状況を知りませんが、『タイアップ』だけで括られても日本歌謡史になってしまうんだなぁ、ということで、その影響が非常に大きいんだなぁ、と。

わたしにとって興味深かったのが、あちこちに原盤権が絡んでくる話。わたしの好きな「スーダラ節」がレコード会社以外で原盤が制作された初めての曲、というあたりから面白いなぁ、と思って読みました。

1980年代後半から1990年代はドラマタイアップの話が中心で、当然知っている曲が多いものの、ドラマを見ていなかったのでかなり醒めた視点で当時も聴いていたことから、思い入れという意味ではかなり薄かったことを再認識しました。

「カチューシャの唄」の項では、以前読んだ 嘘八百―広告ノ神髄トハ何ゾヤ? (文春文庫―ビジュアル版) に出てきた「ホーカー液」の話題が出てきたり(堀越嘉太郎商店だから"ホーカー"なのか...)、「じゅわいよくちゅーるマキ」「銀座ジュエリーマキ」「ブティックJOY」「カメリアダイアモンド」の文字を見て懐かしいなぁ〜と思わされたり、いろいろと本筋と関係ない世界でも楽しめました。

若干、文献引用が多いかなぁとも思いますが、面白そうな書籍もいくつかあるので、気が向いたら読んでみようかと感じました。巻末に参考文献一覧や索引(文中に出てきた曲名だけでも引けるとよい)があるともっと良かったのに。


以下は、これを読んで気になったこと。

おニャン子クラブとの対比で出てきたモーニング娘。の原盤話、後者は関係者(?)が複雑に原盤を持ち合っている点が異なる旨指摘されているので、ちょっと見てみました。

JASRACのデータベース( http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/ )だと、原盤権まで明記されているわけではないようにみえる(出版者、と同じ?)んですが、これで見ると確かに、たいていの曲はアップフロント音楽出版テレビ東京ミュージックが持っているのに、「LOVEマシーン」や「恋のダンスサイト」あたりのもっとも売れた曲は、テレビ東京ミュージックの代わりに吉本音楽出版の名前がありました。売れた曲に絡んでいない、というあたりが、なんとなくテレ東らしいなぁ、なんて思いました。

ひょっこりひょうたん島」がテレビ朝日ミュージックになっているのはよく分かりませんが、「Say Yeah!〜もっとミラクルナイト」にはもしかしてNHKが、と思ったら、案の定日本放送出版協会が名前を連ねており、オトナの世界で物事は出来ているんだなぁ、と。

他のハロプロ系歌手だと状況がまた違うようで、タンポポだと「聖なる鐘がひびく夜」がフジパシフィック音楽出版で「ラストキッス」が日音だったり、いろいろとめんどくさいです。

あと、この手の本でよくある間違いとして、「おニャン子クラブ/夕やけニャンニャン」が『おにゃんこクラブ/夕焼けニャンニャン』になっていたりする訳ですが、今回も、「おどるポンポコリン」が『踊るポンポコリン』だったり(正しい表記の箇所もある)、「谷村有美」が『谷村有実』だったりするのを見て脱力してみました。

谷村有美の名前が出てくるのは「ガールポップ」の文脈で、「プリンセス・プリンセス渡辺美里を筆頭にレベッカ永井真理子(、谷村有美)」が代表例として出ています。ガールポップといえば谷村有美加藤いづみ相馬裕子近藤名奈鈴里真帆で育ったわたしとしては、ここだけは「違〜う」とツッコミを入れたい気分。ま、細かい話ですけど。